【ヘルスケア最前線vol.3 – 追求編】心を豊かにする、“Kawaii” のチカラ!?

2025.09.05
  • Healthcare

知識編対談編と2部にわたりお送りしてきたヘルスケア特集も、いよいよラストスパート。脳の健康状態を示す指標「BHQ」とは何か、「推定BHQ計測ツール」開発の背景にはどんなドラマがあったのか。私たちE-agentの健康経営に深く関わるテーマを、パナソニック ホールディングス株式会社・プロダクト解析センター(以下、プロダクト解析センター)の難波室長も交えながら深掘りしてきました。

そして、今回お届けする第3部のタイトルは「追求編」。本テーマの最終回にふさわしい記事として、“BHQのナレッジやツールを社会生活でどう活かしていくか”という内容をプロダクト解析センターの実証事例も含めてお伝えしていきます!

BHQ Actionsとは?

「推定BHQ計測ツール」については、前回・前々回の記事で詳しくお話しました。E-agentでも実際に導入している、MRIを使用しなくても手軽にBHQの計測結果を推定できるツールです。

今回お話するのは、その一歩先。計測した結果をもとに、どのような行動変容が必要となるのか…その指標となるのが、BHQ Actionsです。BHQ Actionsとは、脳科学の専門家であるBHQプロジェクトメンバーを中心に策定された行動指針。脳の健康維持や向上に有効であることが学術的に示されている生活習慣や行動を「健康管理/運動/社会生活/食事/睡眠休息/学習/環境」の7カテゴリに分類し、それをさらに18項目に細分化したものになります(※)。プロダクト解析センターでは「計測ツールの導入」から「BHQ Actionsのさらに具体的な行動提案」に至るまで総合的なサポートを提供しており、社会生活を営む人々の健康寿命延伸を目指しています。

※一般社団法人ブレインインパクト HP参照

もちろん、この取り組みの対象となるのは企業だけではありません。各自治体の集団検診や健康促進イベントへの活用、高齢者施設のプログラム策定、脳の健康に良いウェルネス商品の開発など…現代社会のあらゆるシーンで、推定BHQ計測技術を活用したサービスがますます増えていく見込みです。

複数の実証事例

ここからは、プロダクト解析センターが実際に行なったBHQ施策の実証事例をご紹介していきます。

フレイルチェックへの活用

フレイルチェックとは、筋力や認知機能の低下を早期発見することにより要介護状態になるリスクを減らすための取り組み。とある自治体ではフレイルチェックの参加率が上がらないという継続的な課題を抱えていましたが、推定BHQ計測ツールの導入により2年連続で参加者が増えており、高齢者の行動変容にもポジティブな影響を与えています。

地場産業と紐づけ町ぐるみのイベントに

近年実施されたとある地域の集団検診では、推定BHQの計測を約300名が体験。加えて参加者に「脳に良いアクション例」として地場産業のアクティビティを配布することで、一人ひとりの健康と地域活性化を両立する町ぐるみのイベントが実現しました。

スポーツジムとのタイアップ

とあるスポーツジムでは推定BHQ計測技術を活用し、利用者の運動習慣と脳の健康状態に関する調査・分析を実施。そのデータに基づき、フィットネスプログラム利用者に対し効率的かつ効果的なトレーニングの提案が可能となりました。

“Kawaii”が、日本を救う!?

前述の実証事例は2023~2024年のものですが、さらに直近のトピックスもご紹介します。それは、「Kawaii BHQ」。2025年5月にサンリオピューロランドで記者発表されたばかりの、株式会社サンリオ様との共同研究プロジェクトです。

突然ですが、現代日本の経済的停滞は脳科学の観点からもその要因が推測されています。それは「社会的同調圧力によるモチベーションの低下」、「過剰注意による意思決定の遅さ」、そして「リスク回避傾向によるイノベーションの抑制」。これらは脳の疲労・活動低下・過活動などにより起こる現象のため、改善のためには脳に良い影響を与える何かが必要です(※)。そこで着目されたのが、「かわいい」という感情でした。「かわいい」は脳に良い。それを実証する研究が進められているのです。

※一般社団法人ブレインインパクト資料より

もちろん、すでに具体的な実験も行なわれています。それが「Kawaii BHQ研究トライアル」。ごく一般的な職場に「Kawaii」を介入させる前とさせた後で、脳の健康状態がどう変化するかを比較するというものです。この実験では、まず普段通りの環境で働く従業員の推定BHQを1週間にわたり計測しました。その後、サンリオキャラクターのバッチやステッカー、ポーチなどを職場で身に着けたり、身近に設置した状態で同条件の計測を実施。すると、明らかにKawaii介入後の結果の方が良い数値を示していたのです。ウェルビーイングの向上で健康経営への大きな一手となる本プロジェクト、今後も目が離せません!

おわりに

「知識編」「対談編」、そして今回の「追求編」と3部にわたりお送りしてきたヘルスケア最前線、いかがだったでしょうか?混沌とした情報の渦中で生活する現代人にとって、さらには様々なAIが氾濫する社会の中で、AIと共存していくためにも自分の「脳の健康」は今後ますます無視できない存在になっていくでしょう。

私たちE-agentにとっても、メンバーの持続的な健康は最優先事項。これからも最先端技術を貪欲に取り入れながら、自社やIT業界、ひいては社会全体の健康経営促進に寄与していきたいと考えています。

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